研究の概要
次世代のテストのあり方研究
2019年度からスタート!

ここでは、本研究の概要についてご紹介します。各内容の詳細については、研究課題の紹介ページや研究紹介動画をご覧ください。




研究の背景
新学習指導要領が出され、「知識をたくさん知っていること」から「得た知識を活用すること」、「学習後の知識量」から「学習過程でどのように思考したか」にこれまで以上に重点が置かれるようになったといえる。2007年より始まった全国学力・学習状況調査の問題でも思考過程を測定しようと問題が工夫され、活用問題として出題されるようになった。しかしながら、紙ベースで出題できる問題形式や分析方法は限られており、測定できる思考力は一部の能力でとどまっている。
一方で現在学校へのパソコン・タブレットなどの導入を進めており、子どもの教育環境が大きく変化している。今般のコロナ禍もありこのような急速なインフラ整備が進む中、子どもたちの学習の仕方も変化しているのである。パソコンやタブレットなどの端末を使用したテストの実施は、Computer Based Testing(以降、CBTとする)といわれる。国内のCBT研究としては、高大連携や英語の能力測定法に関する研究、医学系の研究が散見されるが、教育系はほとんどなく、小学校の教科の能力測定に着目した大規模な研究は見当たらない。国内のCBTは運用の方が先行している状況であり、2020年度から導入する新大学の共通テストや、各種検定、就職活動関連の能力測定でもCBTが活用されている。また、全国学力・学習状況調査の英語でもCBTを活用し始めており、このようなCBT活用の方向性は他教科、他校種へと適用されていくと考えられる。
研究課題の核心をなす 2つの "学術的問い"
【問い1 】 CBT活用ならではの測定方法(問題形式・解答形式)があるのではないか
動画を使ったり、画面上の絵などを動かしたりして、操作すること自体を評価することも可能となるため、ペーパー型(PBT)では測定できないCBTらではの問題形式や解答形式が複数種類あるのではないかと考えている。近年の全国学力・学習状況調査は、単なる知識の再生を求めるのではなく、日常のある状況で問題解決するために、複数の知識を活用して思考する問題が増えている(いわゆる「B問題」)。このような問題をペーパー型テストで出題する際、日常のある状況を説明する場合、絵や文字によって説明することになる。しかし状況を具体的に説明することになると、その分文字量も増え、児童の「読解力」に左右されてしまう危惧がある。
CBTでは、動画再生することができるため、動画の中に様々な情報を入れ込むことが可能となる。そのため、児童にとって理解しやすく、より実態に合った状況を設定することが可能になり、読解力に左右されることもなくなる。

【問い2】 ペーパー型テストとCBT型のテストでは、測定できる能力が異なるのではないか
ペーパー型テストではできなかった表現(問題形式・解答形式等)が可能となるため、これまで測定できなかったCBT型ならではの測定できる能力があるのではないかと考えている。これまで様々な能力を測定しようと試みられているが、ペーパー型テストでそれらの能力すべてが測定できるわけではなく限界があった。それを補完するために実技技能などを測定するパフォーマンステストもあるが、多数の児童を測定するには限界があった。
CBT型テストでは、どのように操作しているかという操作の過程も測定が可能で、これまでパフォーマンステストでしか測定できなかった思考過程や実技技能も測定が可能となる(例:理科の実験操作を画面上で行えるため、実験方法が正しいかCBTで測定可能)。なお、このような、CBTの豊かな表現力によって測定できる能力にどのようなものがあるかは明らかではない。
